昆夏美 「Natsumi Kon 10th Anniversary Concert『Aimer』」開催!
6年ぶりのソロコンサートとなった「Natsumi Kon 10th Anniversary Concert『Aimer』」が、11月27日(土)ヒューリックホール東京にて開催されました!
11月27日昼公演のレポートをお届けします。
ミュージカルで数々のヒロインを務める昆夏美がデビュー10周年を迎えて記念のコンサート「Natsumi Kon 10th Anniversary Concert『Aimer』」を開催。11月27日には海宝直人、28日には笹本玲奈をゲストに迎えて、昆の代表作である『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』『マリー・アントワネット』などから楽曲を披露。ミュージカル界きってのピュア・ボイスに観客が酔いしれたコンサートの模様をレポートする。
2011年、『ロミオ&ジュリエット』のジュリエット役でミュージカル界に躍り出た新星、昆夏美。当時の初心を象徴するような純白のドレスに身を包んだ昆が思い出の楽曲を歌ってコンサートはスタートした。どこまでも透き通る歌声が劇場を満たす。続いて歌うのは『レ・ミゼラブル』より『オン・マイ・オウン』。昆が2013、2015、2017、2019年と演じ続けたエポニーヌ役のナンバーだ。マリウスに寄せる恋心が歌声に溢れ、エポニーヌの切ない想いが蘇る。「20代をこの曲と共に過ごしていろいろな経験をさせていただいた大切な曲」だという。ミュージカルコンサートの冒頭から一気にドラマティックな世界へと観客を導くのは、ミュージカル俳優・昆の真骨頂だろう。
「『Aimer』にようこそお越しくださいました。デビュー10周年で30歳になったということで、日ごろの感謝を皆様と共有できればと思ってコンサートを企画しました。コンサート開催を決めたときは世の中どうなるかわかりませんでしたが、こうして開催できて嬉しいです」と感謝の気持ちを述べる昆。「10周年を振り返り、今まで自分が演じてきた作品の曲や作品以外では歌ったことがない曲を織り交ぜて、『あれも歌おう、これも歌おう』と選曲したら、たくさん歌うことになってしまって……」と笑顔を見せる。
コンサートを企画して改めて「自分は大曲を歌わせていただく機会が多かった」と気づいた昆。バラエティに富んだ楽曲が並ぶセットリストで、昆が出演した作品が多彩なものであるということにも改めて感じた。中でも印象に残るのは『シークレット・ガーデン』より『Hold on』。昆が演じるマーサは自信を失ってしまった少女メアリーに「困難が巡ってきたら、困難から逃げるのでなく、その場で耐えて。そうすれば、困難の方が逃げていく」と歌う。昆は歌詞を読み返して「今に生きる人たちの心に響く歌」だと感銘を受けたという。昆が歌うと歌詞がクリアに響き、楽曲のメッセージがストレートに伝わってくる。あたたかみのある歌声は、多くの人の心を励ます応援歌となった。
昆と縁が深いゲストを招いたコーナーでは、27日は海宝直人が登場した。海宝が2015年『レ・ミゼラブル』にマリウス役で初出演したときから共演が続いている二人。海宝は『レ・ミゼラブル』の稽古中に初めて昆と会話を交わしたときのエピソードを披露した。「コンサートのタイトルに『Aimer』と名付けたので、海宝さんに初めての『Aimer』を歌っていただけないでしょうかとお願いした。海宝ロミオですよ!」と昆が紹介し、『ロミオ&ジュリエット』よりロミオとジュリエットのデュエット『Aimer』を情感豊かに歌い上げた。さらに2022年にキム役(昆)とクリス役(海宝)で共演が決定している『ミス・サイゴン』よりデュエットナンバー『サン・アンド・ムーン』~『世界が終わる夜のように』をメドレーで歌う。ベトナム戦争下でのベトナム人の少女キムと米兵クリスの運命的な恋のドラマが展開して、『ミス・サイゴン』での二人の共演に大いに期待を抱かせた。また、2022年に昆と海宝が共演する『ネクスト・トゥ・ノーマル』より海宝が演じるゲイブ役のロックナンバー『I’m Alive』をソロでエネルギッシュに歌い、会場を盛り上げた。
ミュージカル俳優として開花した昆をイメージするような鮮やかな色合いのドレスに着替えて届ける後半では、公演ごとに違う楽曲を歌うコーナーもあり、「コロナ前は一人カラオケに行くのが好き。公演でいっぱい歌っているのに、さらに一人でカラオケに行ってミュージカル曲を歌っていた」という昆ならではのエピソードが明かされた。
『マリー・アントワネット』より昆が演じたマルグリット・アルノーのナンバー『100万のキャンドル』を歌う際には、「皆さんはマルグリットのナンバーでは『100万のキャンドル』と『もう許さない(心の声)』とどちらがお好きですか?」と客席に問いかける場面も(客席の拍手で判定)。マルグリットの深く強い思いが伝わる絶唱を聞かせた。
そして、昆を代表するナンバーの一つ『命をあげよう』(『ミス・サイゴン』より)。キムがクリスとの間に生まれた息子タムを思って歌うナンバーは、ミュージカルを象徴する楽曲の一つ。昆が23歳でキムを初めて演じたときから7年たった。「7年の月日でいろいろなことを経験して、30歳の私が歌うと23歳のときとはまた違う表現になっていると思う。大人になったなと思っていただけたら嬉しいです」と歌ったこの曲には新たな色合いが加わり、1曲の中で『ミス・サイゴン』が描くテーマを伝える奥深いドラマが立ち上った。
思いを込めて全17曲とアンコール楽曲を歌い上げた昆。「私はミュージカルが大好きで、ミュージカル役者を夢見る少女だったんです。こうして夢を叶えることができて10年の中でいろんな経験をさせていただいた。今までミュージカルにかける思いを今まであまり人前で言ってこなかったけれど、私のミュージカル・演劇に対する愛は誰にも負けない。ミュージカル愛と皆さんの存在があって、私は10年やってこられました。ミュージカル・演劇への愛と情熱が皆さんの活力になればいいなと思って舞台に立っています」と感慨深げに語った。
文:大原 薫